キャッシュレス決済普及率99%!西伊豆町の電子地域通貨「サンセットコイン」導入秘話

更新

お話を聞いた方

西伊豆町 まちづくり課 商工係主査 松浦城太郎さん
「ふるさと納税」をいち早く導入し、県内1位の寄付額を獲得。地産地消を推進する産地直売所「はんばた市場」の開設に尽力、運営も担当する。
電子地域通貨「サンセットコイン」の導入をはじめ、役場の縦割り構造にとらわれないマルチな活動で、地域経済活性化に取り組んでいる。

ボックス:アイコン

西伊豆町とは

静岡県伊豆半島の西岸に位置し、温暖な気候と自然豊かな景観や温泉で知られている。人口約7500人、主産業は観光業。
駿河湾を臨む夕陽の美しさは日本夕陽百選に選ばれており、2005年には「夕陽日本一宣言」を行った。その一方、高齢化率49.9%と、県内トップの高齢化問題を抱えている。

「サンセットコイン」はこうして生まれた

―電子地域通貨「サンセットコイン」導入の経緯を教えていただけますか?

もともと電子地域通貨の導入については、2019年末から話が進んでいました。

2020年9月から始まるマイナポイント事業で、国からの上乗せ最大5000円をなんとか町内に囲い込み、内需拡大したいという狙いがあったからです。

マイナポイントはキャッシュレス決済でスマホユーザーが対象となっている制度でしたが、西伊豆町は高齢化率49.9%の県内最高齢の町で、スマホを持たない人が多い。町全体でかなりとりこぼしが出てしまう恐れがありました。

そこで、他の自治体の事例を参考に、電子地域通貨プラットフォーム「chiica(チーカ)」(開発・運営:株式会社トラストバンク)に着目したのです。

chiicaは、アプリだけでなくカードでも使えます。カードなら高齢者にも使いやすいと感じました。さらに行政施策との連携が可能だったことが、導入の決め手になりました。

そんな中、新型コロナウィルス感染拡大が起き、観光客が激減しました。観光収益が冷え込む中、9月を待たずに町独自の給付金を「サンセットコイン」でやってしまおうという流れになったのです。

3密回避のため特設会場での配布ができなかったので、カードに10000ユーヒ(=10000円)をチャージし、5月から全町民に書留郵便で送りました。

―電子地域通貨への反対意見はなかったのですか?

プレミアム商品券という意見もありましたが、実はプレミアム商品券は発行や集計などの事務負担が事業者も行政側も大きいのです。「サンセットコイン」に一本化することで全体の作業効率があがりました。

「サンセットコイン」の導入やマイナポイントとの連携については、町の広報紙で大きく取り上げ、何ヶ月も伝えてきました。

高齢の方から1〜2件、「なぜ現金じゃないんだ」という苦情はありましたが、正直、想定していたよりマイナスの反響が少なかった。これくらいの摩擦で済んだのかとちょっと驚いたくらいです。

「サンセットコイン」の運用方法は?

▲電子地域通貨「サンセットコイン」カード

1円=1ユーヒで、1000円単位のチャージができる。「サンセットコイン」と「ユーヒ」は、夕陽の町にちなんで松浦さんがネーミングしたという。

―「サンセットコイン」はどのように使うのですか?

お店に行って買い物をして、店舗の端末でカードやアプリのQRコードを読みとってもらうだけです。店舗では現金のチャージも可能です。

店舗の端末はスマホですが、今年度いっぱいは無料で貸し出しています。その後も、店舗側で通信環境を確保してくれれば、端末は差し上げることになっています。

現状、ほとんどの方はカードを使っていますが、徐々にアプリに切り替える方も増えてきています。取扱店の検索などもできて便利ですから。

―取扱店の勧誘はどのように進めたのでしょうか?

事業者の勧誘については、役場職員全員に声がけし、50人ほどのプロジェクトチームを結成しました。

小さな町ですから事業者にも知り合いや友人が多いので、各自のネットワークを使って説明と協力依頼をしてもらいました。その段階で100以上の事業者の参加を得られたので、これならユーザーにもメリットが示せると感じていました。

さらに、店独自の特典をつけてくださいというお願いもしました。「サンセットコイン」で支払うと値引きがあったり、ドリンク1杯サービスなどお得度を高めてもらったのです。

現金や大手キャッシュレスサービスより「サンセットコイン」を使った方がお得だよねという環境を作ったわけです。

現在、西伊豆町の事業者の約30%に参画いただいてまして、取扱店は130店になります。スーパー・コンビニ・ドラッグストア・ガソリンスタンドなど生活必需品を扱う店舗が多いですが、今後は遊漁船や観光施設の参画を増やしていきたいですね。

マイナポイント連携で、マイナンバーカード保有率が全国4位に

―マイナポイントとの連携について、詳しく教えていただけますか?

マイナポイント取得時に、自治体からも上乗せして「サンセットコイン」を付与する仕組みを作りました。そのための予算は、国の地方創生臨時交付金をあてさせてもらっています。

事前に総務省に、プラットホーム運用会社を通じて独自の上乗せサービスを行なってよいか確認をしました。それに賛同いただいて、マイナポイント+臨時交付金というメニューを作ってもらえたのです。

2万円分チャージをするとマイナポイントで25%の5000ユーヒ付与、さらに町から5000ユーヒが付与されます。トータル50%還元で「マイナンバーカードを作ると2万円が3万円になる」というキャンペーンです。かなりお得感があると思います。

2020年9月末の実績で、マイナンバーカードを持っている町民の6割が既に「サンセットコイン」でマイナポイントを受け取っています。

現在、マイナンバーカード保有率は40%強。おかげさまで、2020年9月時点の保有率全国市町村ランキングで4位に入ることができました。カード申請中の方もたくさんいらっしゃるので、さらにランクアップすると思いますよ。

―すごい効果ですね!西伊豆町をモデルケースとして、他の市町村でも同様の取り組みが始まりそうな気がします。

5月に特別定額給付金と合わせて、町民の皆さんに一斉に「サンセットコイン」を届けたことが、この効果につながっていると感じています。

マイナポイントのキャンペーンも長期間アピールしてきたので、マイナンバーカードを作らないと損だよねっていうムードができていたのだと思います。

一気にキャッシュレス化最先端の町に

―ユーザーや取扱店からの反響はいかがでしょうか?

私は「はんばた市場」という産地直売所に勤務していますが、1日に30件くらい「サンセットコイン」でのお支払いがあります。高齢者の方も苦にせず、楽しんで使っていただけているという印象です。

取扱店からの反響では、印象深いことがありました。高齢経営者のお蕎麦屋さんがあるのですが、当初は「よく分からないからウチはいいよ」と後ろ向きなお返事だったのです。再三ご説明に通って、なんとかご参加いただけました。

ふたを開けてみたら、かなり「サンセットコイン」が利用され、来客者が増えたそうです。使い方にもすぐに慣れて「あの時誘ってくれて本当に良かった」と嬉しいご意見をいただきました。

ユーザー、事業者ともにやってみたら簡単だったという感想が多いです。

現在、町民のサンセットコインの保有率は99.8%。ほぼ全員が持っている状態です。県内最高齢の町が、キャッシュレス化最先端の町になったと言えるんじゃないでしょうか。

―キャシュレス化最先端の町になったとは驚きです。目標にされていた内需拡大への効果はいかがでしょうか。

5月の給付金で7500万ユーヒが町内で流通していまして、さらにマイナポイントで3000万ユーヒが流入します。

西伊豆町では2019年から、介護保険を使わなかった高齢者に「健幸づくり給付金」として10000円のボーナスを差し上げているのですが、2020年は「サンセットコイン」で支給しました。それでさらに3000万ユーヒ、トータル1億3500万円になります。

これは決して町外に出ていかないお金ですから、経済効果はでていると思いますよ。

給付金以外の現金チャージ分は月200万ユーヒほどですが、今後はこれを増やしていければと思います。

地域住民にも観光客にもやさしい電子地域通貨を

―観光事業への取り組みも検討されているとのことですが、どのように進められていますか?

Go To トラベルキャンペーンの追い風もあって、観光客が戻りつつあります。色々と施策を打ちたいと思っています。町民への付与だけでなく、観光客が使える仕組みを増やしていけば、流通量も話題性も上がっていきますから。

6月から「バイ・シズオカ バイ・ヤマナシ富士山キャンペーン」という静岡・山梨県からの観光客に、宿泊費に応じた「サンセットコイン」を付与する施策を行なっています。

期待しているのは9月から始まった、遊漁船を利用した釣り客対象の「ツッテ西伊豆」です。釣れた魚を「はんばた市場」で「サンセットコイン」で買い取るというサービスです。

通常、魚は漁師さんしか売れないのですが、自分の魚を売ってその儲けで遊べるという非日常体験が人気です。釣果は平均1000~2000ユーヒ、中には7000ユーヒになる人もいます。

それで美味しいランチを食べたり、ガソリンスタンドでガソリンを補充して帰ったり、楽しんでいただいています。「はんばた市場」としても地産地消推進になり一石二鳥なのです。

あとは、まだアイデアレベルですが、スタンプラリーのような形で「サンセットコイン」をゲットしてもらうサービスを考えています。観光客に町おすすめの観光地を周ってもらい、その場所にあるQRコードを読み取ってもらうのです。500ユーヒくらいもらえて、ちょっとお茶したりスイーツを食べられたら楽しいですよね。

―「サンセットコイン」が長く愛され継続利用されるための、今後の計画を教えてください。

予算が絡むのでハードルはありますが、チャージ時に5%上乗せのサービスができれば、継続して使ってもらえるのではないかと考えています。

それと今後、プレミアム商品券など独自の経済対策がでてくれば、常に「サンセットコイン」の機能を経由させていきたいです。

経済活動以外の「サンセットコイン」付与も進めています。

健康給付金「健幸マイレージ事業」という、健康づくりに取り組む人を対象とした制度があります。例えば、ラジオ体操に参加したら台帳にスタンプを押していきます。それが貯まると500ユーヒをもらえるのです。

ボランティア参加者への施策なども議論に上がっていますし、接点を増やしていくことが大切だと思っています。

とにかく形骸化しないこと、一過性のものにしないことが第一ですね。官民連携して、メリットをどうユーザーに示していけるかが鍵になります。

それが実現できれば、西伊豆町の皆さんは結構使い続けてくれるのではないかと期待しています。「サンセットコイン」で地域の経済圏を作れるぐらいのスケールに育てていきたいですね。

※記事内のデータは取材時2020年10月現在の状況です。

まとめ

高齢者にも事業者にも分かりやすい運用方法で、西伊豆町の経済をあたためる電子地域通貨「サンセットコイン」。

今後も、西伊豆町のような地域色豊かな電子地域通過が、続々と登場してくるかもしれません。地域住民のみならず旅行で訪れる人にも、地域通貨でしか得られないお得なサービスや魅力ある商品で楽しませてくれそうです。

あなたの住む町や旅先にどんな電子地域通貨があるか、ぜひ調べて活用してみてください。

おすすめ記事

カテゴリー一覧